言の葉ログ

ふと振り返る

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和菓子職人からWeb制作者になるまでの話

和菓子職人として働き始めたのは、高校を卒業してすぐの頃。
家計を支える必要があって、「やらなきゃ」というところから始まった仕事だ。
気づけば20年以上。
毎日同じ時間に工房へ入り、手を動かし、四季に合わせた和菓子を作り続ける日々だった。

職人としての誇りもあった。
お客様の手に届くまでを想像しながら、細部を整えて仕上げる。
見えない部分こそ丁寧に。
そういう世界は、自分にとって心地よく、やりがいでもあった。

けれど、ずっと心の奥に灯り続けていた小さな想いがあった。

「いつか長い旅に出たい。日本一周をしてみたい。」

ただ、その職場に長期休暇という概念はなく、
「そんなの無理だよな」と自分でも諦めていた夢。
言葉に出すことすらしない、遠い憧れみたいなもの。

でも、ある時ふと確信に変わったんだ。

「このまま働き続けたら、一生やらずに終わる。」
「自分の人生を、自分の意思で選びたい。」

それまでの20年は、生活のため・家のためという理由が大部分を占めている。
でも、40代を前にして「自分の人生を取り戻したい」という気持ちが大きくなっていった。

そうして、思い切って仕事を辞める。
勇気というより、“自分を諦めたくない”という気持ちの方が強かった。

その後、本当に日本一周の旅に出た。
車中泊をしながら北から南まで、5ヶ月かけて。
その土地、その瞬間、その時にしか出会えない景色と人に触れながら、
「ああ、自分はちゃんと生きてるんだな」と実感できた旅だった。

旅から戻る頃には、次に進む方向が自然と見えてきた。

「ものづくりが好きだ。」
「誰かの役に立つものを作りたい。」
「丁寧に仕上げる仕事が好きだ。」

この感覚は、和菓子職人の世界にも、Web制作にも通じると感じた。

そこで、ハローワークを通して職業訓練校へ。
HTML/CSSの基礎から、デザイン、WordPressまで、一つひとつ学び直した。
大人になってから勉強が楽しいと思えたのは初めてだった。

卒業後は官公庁案件を扱う制作会社へ就職。
ディレクションからコーディングまで経験しながら、Webの世界がどれだけ奥深いかを知った。

そして、独立。
フリーランスとして活動する今、思うことがある。

“あの時、行動した自分のおかげで、今の自分がいる。”

和菓子職人の20年は無駄ではなかったし、むしろ今の仕事の基盤になっている。

  • 細部を整える癖
  • 仕上がりの美しさへのこだわり
  • 誠実に積み重ねる姿勢
  • 誰かが喜ぶ顔がやりがいになる感覚

これはどの業界に行っても変わらない、自分の芯なんだと気づく。

いまは上尾を拠点に、「笑顔の架け橋になるWeb制作」をテーマに活動している。
地域のため、人のため、自分自身のために。
人生はいつからでも変えられるという実感をもらったからこそ、これからも前に進んでいきたいと思う。

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